ビール

ビールを飲みながら、おじさん達は自分よりもっとおじさんの、そして偉い人の悪口を言い続ける。みんな、現状に何らかの変更が欲しいと思っている。それは中学生が、意味もなく階段に座って「何か面白いことないかな」と言う、あれと同じ類いのものだ。そういうのも最近はあまり嫌いではない。僕だって、現状に変更が欲しい。ただ、あまりにそういうのは明け透けな気がして、笑って、そうですね、と言うだけ。それでも職場では日頃は喋らないから、社交的なときもあるんだね、となる。構わない。俺はもう学生じゃないから、自分の感じ方がその場とずれていることを誇ったりはしない。みんながみんな、大体がずれている。それを黙っていられる人間と、黙っていられない人間との区別はある。そういうことを気にしないでいられる時代もある。今は違う。ビールを立て続けに飲んで、永遠に静かでいられるような夜、テーブルの上は騒がしいけれど、心は一つも触れ合っていない。アルコールが一時的な連帯を感じさせて、そしてそれは全部が気のせい。笑っていればいい。笑っている人と一緒にいたい。静かでいられるから。だって、それは何も話されていないのと同じなのだから。