今、友人夫妻が来るのを待っている。2人は息子がかわいいと言う。息子に会いにわざわざ県の北部からここまでやってくる。僕も息子のことをかわいいと思う。何よりかわいい。物事がうまく収まっている。

友人たちには来月、子供が生まれる。生まれたら、きっと、子供を何よりかわいいと思うようになるだろう。子供のかわいさは、一方で大切な何かを奪っていくようだけど、大概の人間はそんなことには気がつきもしない。気がついたとしても、意識しようとしないだろう。そこには、損得勘定のようなものがあるのかもしれない。赤ん坊が与えてくれるものは、想像していた以上に大きい。何だか恐ろしい感じがしなくもない。留保をつけているみたいだとも言えるのだから。

息子は寝ている。背中をこっちに向けている。僕の息子の後頭部ほど愛らしいものもない。ちょっと出っ張っていて、うっすら地肌が見える。顔を覗き込む。小さい手。表側も鼻から下だけが出ている。大人になると、大人の顔として落ち着くのだろうか。その頃には、この留保はなくなるのだろうか。

妻は料理を作っている。客のために用意をしてくれている。息子が生まれて、妻との関係は前ほどしっくりこなくなった。こなくなることもある、という話は聞いていた。自分たちには関わりのないことだと思っていたけれど、自分たちにこそ関わりのあることだった。赤ん坊がやってくる。真ん中に座る。元いた2人の距離があく。

天気はあまり良くない。曇っている。できれば今日は酒を飲みたい。