新宿



東京には空が無い、と言うが、それは青空にグラデーションが無いということでしょうか。そういう意味であれば、確かに東京には空が無いと思う。どこを見渡しても、目の前にはビルがある。前には都庁に出張する用件があって、それがとても楽しみだったのだけれど、今年からは無くなり、普段新宿に遊びに行くというと一丁目の方へ行く、しかしあの町の本当に楽しいところは西の方にあるんじゃないかと、例えば文化服装学院の前とか。あそこで深夜にビールを飲んでいると、背にはカレー屋があるらしく、それもインドカレー、とてもいい匂い。それから夢の匂いもする。それは実現を半ば確信してしまった、なのに何の根拠も無いものなので、それは本当に夢?今だって夢はあるけれども、より純化した意味での、つまりは夢なのです。

青空にグラデーションがあるということを、写真を見ていて発見した。その時その場にいたはずの僕は、ポールとかススキを振り回す彼女とか、そういうものを撮っているつもりでいた。

あの時、ああ言っておけば良かったとか、そういう風に感じることはそれこそ山のようにあるけれど、あれはね、僕が思うに、あの時ああなって欲しかったんだ、と言うことが何年か経って分かって、それであの時ああ言うべきだったとか、こうしていたのなら、とか、そういうことなんじゃないでしょうか。頻繁にその、ああのところを考えては、夜眠れなかったり、うっかり早く寝すぎて日の出前に目が覚めたりする、しかし結局は今のことはやはり今では分からない気が、そんな印象ばかりが、ある。

目覚ましが鳴れば、嫌だけれど起きるし、仕事に行くのはそんなに嫌じゃなくなってきていて、多分そういうことで夢は純粋な形の夢になっていく。