{日記]

季節の終わりを感じるのはその季節が好きだからなんだな、と山崎ナオコーラは書いていた。そんなに熱心に読んでいる作家というわけでもないけど、この部分はうまいことを書くなと思った。共感したりすることもある。

井の頭公園に桜を見に行ってきた。いつの間にか季節は完全に春、気をつけないと黒い大きなアリは弁当を狙っている。少し目を離せば弁当箱をよじ登ろうと懸命なこのアリは、冬の間をずっと土の下で眠っていたのだろうか。というか、そもそもアリって冬の間どうしているんだろう?と話しながら、僕はそれを遠くに払う。アリは土の下で今日の春を長い間待っていたのかもしれない。一方の僕にとって、今日というものは冬の終わり。

そういうことを世間では視点の違いとか言うらしいんだぜ。

子供が走る。土けむりがたつ。音は少し遠い。