夜の道で後ろがチカチカと瞬いたので、街灯が切れかけているのかと振り返ったら中学生くらいの少年が自転車で道を蛇行しながらこちらに向けて走ってきた。それが照らす前照灯が断続的に家の壁に反射していたのだった。ノリノリだと思った。少年はそのまま、右へ左へ傾き離れていって、先にある角を左に曲がった。僕もだいぶ経ってからそこを曲がった。後ろ姿はもう見えなかった。

土曜日、夕方まで働いたあと、友だちとウチで飲んだ。大体のときに深く酔うまで飲むのだけど、その日は特に深くて、あまりに深かったから一人が酔い覚ましに歩こうと言いだし、途中でイタズラ、もう一人が走ってる最中にもう一度同じことをしたから、普通に考える必要な距離の二倍は走った。その結果は二倍愉快だった。

15分くらい歩いたところにある公園の池に着いた頃には余計に酔っていた。ウシガエルが鳴いていた。僕はウシガエルがどういう声で鳴くのか、それまで知らなかった。だけど、そのとき教えてもらったから、今なら知っている。持ってきた酒瓶はどこかへいってしまっていた。酔いにまかせて吹いていたシャボン玉は底まで使い果たした。最後のシャボン玉が池の水面で割れる。僕はそれを、仕事でイヤなことがあったから買ったんだよと言った。みんなが笑った。そんなにイヤな気分でもなくなっていた。

シャボン玉が水面に接して割れる。ウシガエルが鳴く。単調な声でずっと。少年が蛇行しながら自転車で走る。そういうことが続く。それは思ったよりずっと長く繰り返される。好むとか好まないとか、案外そういうことにも関係が無く。