オリンピックは彗星のようなものだと思う。ふだんスポーツなんかに全然興味を示さない僕たちだけど、彗星が来るとなると別の話で、別冊ニュートンとか買ってちゃんと浮かれてみたりもする。夏には人をそういう気持ちにさせるところがある。

職場の喫煙所で自分がどれくらい彗星を楽しみにしているかを話して、ウチで友だちとサッカーを観戦することにした。

ピザを出前でとって酒を飲んでいたら、何かをやり遂げたような気分になってしまった。実際には何もしていないどころか、はじまってさえいなかったのだけど。

友だちはサッカーがはじまったら起こすようにと言ってソファーで寝はじめた。妻はその前にやっていたバレーボールを非常な努力をはらって見終わって、そのまま寝に行った。僕はひとりで卓球も観戦した。サッカーがはじまった。人はけっきょく一人だった。

友だちが前半の途中でいちど起きたけれど、ハーフタイム中に前半を総括してまた寝た。この人は確実に普通の日に自分の家でぼうっとしているより睡眠をとっていると思った。サッカーはそのあと負けた。

数年間分のスポーツを見た気分だった。やっぱり彗星がやってきてよかったと思う。

翌日、昼近くに起きたら妻と友だちが何かですごい盛り上がって話しているのが聞こえた。階段を降りていって仲間に入る。テレビ画面には彗星の尾。