最近、所帯を持った。最近でもないんだけど、それはどうでもいいとして、所帯を持つとどうなるか、一番大きな変化は、僕の答えとしては、ごはんを食べるようになった。ごはんを食べると太る。私のBMIは最早やせ気味ではない。通常だ。それに併せて頭の中味も通常になってきた。寂しいと言えば寂しい。目に見える範囲の世界は頭の中味で規定されている。狂騒が去ると一面の沃野だ。それは確かに沃野なのだけど、牛が草を食んだりしているのを眼下にぼうっと眺めるのはなんとも退屈なのだ。退屈。おもむろにやって来て牛の頭をハンマーで殴ってかち割る者などいない。牛の頭は僕たちに割れるものでもない。今晩は日頃の個人的な禁制を破って家で酒を飲んでいる。個人的に、と言うのは矜持だ。するとどうだろう、世界は広がっていった。どんどん広がっていく草原の地平線の間近に牛が豆粒のようだ。牛は豆粒なのだ。そうだった、そうだった。まばらな綿雲は繰り返し。酒は飲むためにあるのだった。