雨にうたえば

風が強くあたたかで、うっかり日焼けなんかできてしまいそうな昼に職場の車を掃除していた。普通、車をキレイにするというと洗車という言葉を思い浮かべるけれど、その車はちょっと目を疑うくらいなかが砂で溢れていた。積もっていたその砂をただかき出す作業なので、やはり洗車なんかじゃなくて掃除をしたのだと思う。下にしくマットなんか何度叩いても叩いてもホコリが舞い立つ。途中で諦めてしまって、かけていいのかどうか分からない手すりにマットをかけて、使っていいのかどうか分からないシャワーでマットを洗い流した。手元には小さな虹。虹がかかるということは周囲には細かな水滴が散っているということ。革靴でするものではなかったと気が付いたけれど、そのときには完全に手遅れだったのでそのまま続けた。心に虹があればいい。僕が思いつくことの大半は、きっとどこかで聞いたり読んだりしたフレーズなのだ。でも僕にはそれが何だったか分からない。心に虹があればいい。

インプットばかりをして壊れてしまった機械。それが僕。もしくはHAL9000。歌をうたいます。だから僕を殺さないで。僕が自律的に存在していることを認め、そして許して。

だけど水というのは機械にとって大概悪いもの。そういうわけで僕はそのまま壊れた。駐車場にはしばらく虹が残って、それから消えたという。

ところで別の僕は昨晩、メールやらツイッターやらをして、テクノストレスで眠れず大変だった。たいへん楽しかった。僕は毎日ねむり死に、起きて生まれる。とても便利。壊れてしまった僕もあと5時間もすれば死ぬ。そして11時間後にはまた生まれる。新しいかたちで、人がそれに反対するのでなければ(ムーミン)。