サリンジャーなど

フラニーとゾーイー
フラニーとゾーイー」が新しく訳されて新潮社から出版されている。そして、ゾーイーはズーイになっていた。ズーイには慣れないけれど、訳が新しくなって良かったと思う。何と言っても、フラニーが今では裸の大将みたいな話し方をしないのだから。「ぼ、ぼくはオニギリが好きなんだな」みたいなあれだ。オニギリが好きとかいう文脈はもちろんない。

・アニメ映画
スカイクロラ」と「サマーウォーズ」をツタヤで借りてきて観た。スカイクロラは面白かった。設定としてはカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」に似ていた。ただ、あのキャンバスを真っ黒に塗りたくっていくようなプロットのなかに、ほんの少しの灰色を混ぜておくような、良質な小説でやろうとすると安易なカタルシスに流れていくようにも見えるそれを、アニメ映画でならされても割と観られちゃう、そんなお得感があった。観て良かった。

・他の本
「死ぬ瞬間」余命幾ばくもない人に、精神科医が臨床的な観点からインタビューをする。メメント・モリ
「生きるとは、自分の物語をつくること」小川洋子河合隼雄の対談集。河合隼雄ユング心理学の臨床医。対談で死を忘れるな、と言っていた。
「冷血」カポーティ。具体的な犯罪を、主に犯罪者の側から見るんだけど、小説を日常からの逸脱として見るのなら、ドキュメンタリーとしてそれを扱うのは最高の素材だと思う。少なくとも僕は、セカチューを泣きながら一気に読む人を扱った話なんて読みたくない。フーコーの「ピエール・リヴィエール」とか村上春樹が訳したギルモアの兄弟の話とかも面白かった。

・生活
特に何もない。何もないなんて恐ろしいことだ。空虚な生活がそのあとの圧倒的な空虚に直結しているというのに。エントロピーの増大に抗せるうちはやってもいいんじゃないかとも思う。でも疲れる。僕は今、割と不本意な職場にいて、人事が発表される年度末の今日この頃、異動で呼ばれた人間に嫉妬して一日を過ごすこともあったりする。空虚。あと、柴崎コウのことは好きだ。笑い方がすごくいい。幸せでいてほしいと思ってる。