夢のような景色は後から考えれば夢だったのかもしれない

明日から旅行に行く。今晩はその準備をしている。前は旅行の前日に妙に浮かれてしまって、夜中まで飲んでいたり、翌日の朝には二日酔いで旅行の初日を台無しにすることが多かった。今はそういうこともない。カメラの充電器を探してバッテリーをセットするし、着替えもカバンにつめてある。旅行に対するスタンスのようなものが変わっているのかもしれない。

はじめて海外に行ったときも前の晩の遅くまで飲んでいた。それから飛行機に乗った。旅行先で激しい渋滞にはまってタクシーの運転手が「象がいるんだ」と言っていたような記憶があるのだけど、それは本当に僕の記憶だろうか。今では判然としない。たくさんの屋台。裸電球のしたで机をたたきながら歌う老年の白人。場違いなくらいいい声で寂しい曲調だった気がする。笑顔。焦熱。道沿いに急に現れる国王の巨大な肖像画。それは本当にあったのだろうか。

いくつかは確かにあった。他のいくつかは確信が持てない。旅行をする。日常から離れた光景は後から思い出すときは夢を見ていたようで、それが現実にあったのだということはあしもとで揺らぐ。