日本橋千疋屋で2000円近くするパフェを食べる。週末、一晩飲んだと考えれば、という観点で見ると大概のものがそんなに高くないように思える。すべては迷妄だ。この場合、酒が高い。

金は貯まらない。日本橋のあたりからは富のにおいがする。

銀座に天津飯店という中華料理屋がある。味はいい。入り口は汚くて、入るのにすこし躊躇したけれど。

店内に関西弁の二人連れ。商売に関する自己の信念とか、どれだけ自分が現場に貢献しているかなど、店内の全員に聞こえるくらいの声で話していた。ファミレスで夢を語るフリーターのようなものだと思っていたら、彼らは若くなかった。どう見ても40代にはなっていた。

学生のころ、フルキャストの現場で一緒だった人にも似たような人がいた。俺はここに来る前、銀行でシステムを一人で入れ替えるような仕事をしていたんだよ、と言っていた。何千万ももうけたらしい。たぶん、僕の次に会う学生なんかには違う話をするのだと思った。それは大きな都市計画を手がけた建築士だったりするのだろう。

それまで工事現場に行った経験もなく、体力もなくて派遣仲間の足を引っぱた僕は、その派遣先ですごくみじめだった。銀行ですか、すごいですね、と話した。それは媚とかそういうものとも違って、足を引っ張る人間も、虚勢をはる人間も、そこではみんなみじめで、一番近い感覚で言えば同胞意識のようなものだったと思う。僕は二度と派遣では仕事をしなかった。

だけど、あの人のことは今でも好きだ。今頃どこにいるのだろう、と思う銀座の近辺。