今の職場から異動することが決まっているので、仕事でたまに会う人にもタイミングが合えばそのことを伝えている。「残念だよ」とか言ってくれるのは嬉しいし、自分も寂しいような気がするのだけど、心からそう思っているのかについては自信が持てない。

外で鳴っている鐘の音がよく聞こえないのと、話しかけてくる人の声が聞き取りづらいのがストレスで、暇な時はだいたい本を読んでいるふりをしていたのも、もう少し話しておけばよかったのかもしれない。聞き取れないのは僕の右耳が聞こえないせいか、もしくは鐘の音が遠いから。説明しづらいものの、鐘の音を聞くのが仕事の範疇に入っているという不思議な仕事だった。

書きようによっては詩的な感じにもできる。「鐘の音を聞く」なんて。なんかの小説のタイトルみたいに。実際には、全然、詩的なんかじゃなかったし、極めて俗物的な仕事で苦手だったのだけど、離れるとなると少し寂しい。もっと好きになってみてもよかったんじゃないかとも思う。大概のものはそういう風にできてるよう。